Q: ミュージシャンのメイリンさんからのご紹介ですが、どのように知り合ったんですか?
メイリンちゃんとは友達の友達みたいな感じで知り合って、よく会うようになりました。メイリンちゃんって、音楽の印象からするとクレイジーなのかなって思うかもしれないですけど、実はすごくきっちりしていて丁寧で。そのギャップがすごく面白い人。私は逆に、「静かなのかと思ってたけど、会うとキャラ濃いね」って言われるんですけど(笑)。それはともかく、互いに興味を持っているものが似ていたり、メイリンちゃんとは波長が合うんですよね。だから、最近は私が撮る写真のモデルになってもらったりもしています。
Q: 写真に興味を持ったのはいつ頃なんですか?
高校の時ですね。家のなかで、親が昔に使っていたフィルムカメラを見つけて、なんとなく撮り始めたら、楽しくなっていった感じ。それまでも記録っぽい感じでデジカメは使っていたんですよ。でも、フィルムで撮ったものを印刷してみると、デジタルにはない繊細な質感があるじゃないですか。それに惹かれたんだと思います。
Q: 当時はどんなものを撮っていたんですか?
友達がメインでしたね。バンドをやっていた友達の練習風景を撮ったり。当時、一番身近な存在だったというのもあるし、やっぱり人が好きだから。その時一番興味があるのが、人だったということなんでしょうね。
Q: その後、モデル活動はどういうきっかけで始めたんですか?
10代の終わり頃、スタイリストの井伊百合子さんに声をかけられて、雑誌のファッションページでモデルをしたのがきっかけです。当時はインスタグラムが流行り始めた頃で、井伊さんが私のアカウントを見つけてくれて、メッセージをいただきました。それまでも友達の作品撮りとかでモデルをしたことはありましたが、本格的なやつはそれが初めて。そのページを今の事務所の社長が見てくださって、今に至る感じです。
Q: そもそもモデルを仕事にすることに興味はあったんですか?
いや、私は背も高くないので、モデルを仕事にすることは、全然視野に入れてなかったんです。だから、ほかのことと並行してできれば良いかなってくらいの軽い気持ちで始めたんですけど、最初は求められていることがわからなくて、「私はここにいて良いのかな?」って思いが強かったですね。
Q: でも今も続けられているということは、どこかで楽しくなる瞬間があったということですか?
気付いたら楽しくなっていた感じですかね。やっぱり人が好きだから、いろんな人に会えて話を聞けるのも刺激的だったし、撮影現場でいろんなライティングを見れるのも楽しかった。そうこうするうちに、モデルとしての表現の幅も広がってきて……もともと自分のルックスに自信がなかったんですよ。だから、出来上がった写真を見ても「うーん……」って感じだったんですけど、だんだんモデルとしての自分の表現を客観的に評価できるようになって。自分のルックスには興味が湧かないけど、それが表現として良いのか悪いのか判断できるようになったので、楽しくなっていったというか。
Q: モデルをしていて、挫折を経験したことはありますか?
モデルは、100のオーディションを受けてひとつ受かれば良いって世界なので、それで言ったら挫折はめちゃくちゃあります。あとは、相手が満足していないかもって思った時も、落ち込みます。でも、それを怖がらないで向き合ったほうが自分も仕事がやりやすいし、相手に喜ばれる確率も高い気がするんですよね。だから、今は怖がらず、求められる限りはやりたいって気持ちが強いです。
Q: モデルをする上で、大事にしてることや、心がけていることはありますか?
どんな表現が求められているかってことに、アンテナをしっかり張ることですかね。それ以外は、現場を楽しくしようってことしか考えていないかも(笑)。
Q: では、今日の撮影では、どんな表現が求められていると思いましたか?
今日は……涼しげな表情と意外な動きですかね(笑)。
Q: 間違いないと思います(笑)。ところで、モデル活動を始めた頃、「ほかのことと並行してできれば良いかな」と思っていたと言っていましたが、現在はその言葉通り、仕事として写真を撮る機会も増えていますよね。こちらのきっかけは何だったのですか?
私、めっちゃタンブラー世代で(笑)。誰かの撮った写真を自分のフォルダのなかでまとめるのが好きで、インスタを始めた頃も、自分の撮ったものではない写真を、自分の好きな配置で並べるってことをしていたんですね。でも、途中から自分の写真も混ぜるようになって。そうすると、「次はどんなものを撮るか?」「もっとこう撮ったほうが面白いんじゃないか?」みたいなことにどんどん目線が向くようになって、自分の写真をそれまで以上に“作品”としてとらえるようになったんです。それで自分の写真だけをインスタに投稿してみたら、ありがたいことに興味を持っていただけて、仕事としても撮るようになった感じですね。仕事として撮るのも、すごく楽しいです。
Q: 仕事として写真を撮る楽しさは、個人的な作品の為に撮るのとはまたひと味違うんですか?
そうですね。仕事の場合はクライアントがいるので、やっぱりめっちゃ緊張するし、めっちゃプレッシャーを感じるんですよ。だけど、緊張感と集中力が詰まっているというか、100で写真と向き合って、終わった後にほっとする感じは、個人的に撮っている時には味わえない楽しさだと思います。全然慣れませんけど(笑)。
Q: そんなモデルと写真家を並行してやることで、相互に良い影響とかってあるんですか?
モデルをしていると、相手が欲しいものがすぐかわからないこともあるんですよ。その気持ちを知っているからこそ、写真家としてモデルに接する時は、できるだけこちらの思いを伝えるようにはしています。
「エレガントなイメージのコートだから、逆にワークっぽい素材のアイテムを合わせてみました」とミチキさん。意外にも足元はビビッドなピンクが目を引くアウトドアサンダル。「コートとサンダルの組み合わせはよくしちゃうんです。季節感がわからなくなりますが、そこも好きなんです」
Q: 俳優が映画監督をする時と似た感じかもしれませんね。ミチキさんはとても素敵な旧車を所有しているそうですが、その出合いも教えていただけますか。
子供の頃から昔の映画を通して古い車には興味があったんですよ。もともとバイクに乗っていたので、その延長で旧車も見るようにはなっていましたが、自分の手が届くものだとは思ってませんでした。だけどある時、旧車に乗っている人に出会い、いろいろ聞くなかで、自分でもケアできるし、価格帯もそんなに高くないとわかったので、リアリティが湧いてきて。ちょうど車が欲しいタイミングでもあったので、「じゃあ、旧車にしちゃおう」と決めた感じです。
Q: 旧車って急に止まるイメージがあるんですが、その辺は問題なく乗れているんですか?
いや、急に止まるんですよ(笑)。この前も、信号待ちの先頭で止まっちゃって、「すみません!」って感じで、応急処置をしました。今乗り始めて2年目ですが、そういうことにもやっと慣れてきた感じです。維持しなきゃいけないから、そういうケアは自然なことだと思っていたんですけど、この前その姿を見た人に「たくましいね」って感心されちゃいました(笑)。確かに、新車だったらこんなことはしないんですよね。旧車しか所有したことがないから、忘れていましたけど。
Q: だけど、その苦労を補って余りある魅力が、旧車にはあるということなんですか?
旧車のほうが“自分だけの車”って感覚を持てる気がします。同じ車種でも、これまでの使われ方で雰囲気がかなり違いますから。
Q: スピードも出しちゃうタイプなんですか?
そうですね(笑)。今乗っている車に関しては、ゆっくりしか走らないやつなんですけど。でも、50ccのバイクレースの同好会に入っていて、最高速度はそんなに出ないやつですが、サーキットで走ったりしています。1回骨を折っちゃったんですが、今年はまた出たいですね。
Q: 最初の質問の時、「静かなのかと思ってたけど、会うとキャラ濃いね」と言われると語っていましたが、確かに聞けば聞くほどアクティブな方ですね。最後に、今後の目標などあれば教えていただけますか? プライベートなことでも、仕事にまつわることでも良いのですが。
えー、何だろう……。でも、世界中を回って写真を撮りたいですね。地球を撮りたいというか。ずっと人に会うのが好きで、逆にひとりで行動したり、人以外のものに向き合うのが得意じゃなかったんですよ。写真についても同じで、風景とかはリアクションが返ってこないので、自問自答みたいになるのが苦手で。でも、歳を重ねるにつれて、そういうことにも興味が湧いてきたので、これからも人は撮ると思いますが、同じくらい風景とも向き合っていければと思っています。
モデル・フォトグラファー
サクラ マヤ ミチキ
ニュージーランド人の父と日本人の母のもとに生まれる。2014年、モデルとしての活動を開始。雑誌やカタログでモデルをする傍ら、写真、グラフィックデザインなど、多岐にわたってアーティスト活動も行っている。Instagram @mayamichi