ジャズとか、聴いてみたらおもしろいですよ
みなさん、こんにちはアルフレッド・ヒッチコックです。
そうねぇ、音楽ねぇ。そもそも、私は1899年生まれ、カトリック系の学校出身なんですよ。だから、小さい頃からグレゴリオ聖歌とか、宗教音楽ばかり聞かされていました。
1920年代から映画の世界に入ったけど、その頃はまだ無声映画。映画館へ行くと活弁士という人がいてね、映画に併せてセリフやストーリーを喋るって時代で。フランスやドイツでは、映画に併せて楽団が生演奏で音楽をつけたってこともあったけど。それには憧れたけど、そのうち今みたいなサウンド・オン・フィルム式の上映が主流になってしまってね。
娯楽的として音楽を聴き始めたのは、十分大人になってからのこと。びっくりしたのはアメリカやフランスで聴いたジャズかな。‘30年代のビッグバンドの音楽は、大体想像がついたけど、‘40年代後半頃から流行り出したモダンジャズには驚かされた。即興演奏が中心になっているため、譜面がほとんどないんだから(笑)。映画でいえば、脚本がないのと同じこと。どうやって演奏しているのか、最初はわからなかったし、何を良いとするかもわからなかった。でも、しばらく聴いているうち、音楽的なシステムがわかってきた。例えば、その演奏グループがピアノ、サックス、ベース、ドラムだとしたら、スタートとエンドだけ決め、全員でリズムを共有したら、各自のスキルを戦わせていく。勝ち負けこそないものの、現代のラップのフリースタイルバトルに近いというかね。演奏者のコンディションは常に万全じゃないから、名人でも酷い演奏の時もあるんだ(大爆笑)。
こう言っちゃなんだけど、私が『めまい』(1958年)を発表した時、評論家からボロクソにケナされ、思うような興行成績を上げられないこともあるんだから。時の運と勝負しているところに、共感するところはあるかな。
まぁ、そこまで音楽には明るくないから、音楽の話はこの辺で。ご機嫌よう
PLAY LIST 7
DJ・音楽ライター
渡辺克己
雑誌『BRUTUS』を筆頭に主に音楽に関する記事のライティング、企画・編集・監修を行うフリーランスの音楽ライター。また都内のクラブなどを中心にDJとして活動している。映画好きでもあり、“サントラ・ブラザース”という名義でDJ仲間である鶴谷聡平、山崎真央とともに映画と音楽にまつわる座談をBRUTUS.jpにて連載している