vol.04
“DJ ジョージ6世”

Text & Music selection: Katsumi Watanabe
Illustration: Terry Johnson
Plan & Edit: On-Point Design

トレンチコートが似合う歴史上の人物、映画の主人公がDJだったら何を選曲するのか!? そんなもしも企画が「なりきりDJアカス」。&AQが招いたDJアカスが毎回さまざまな人物になりきって、自己紹介とともに独自のプレイリストをお届け。第4回目はジョージ5世とメアリー妃の次男として生まれ、後に英国王にもなった、故エリザベス女王の父・ジョージ6世にアカスがなりきります!

本当は、自由にいろいろな国へ行きたかったんです

 みなさん、こんにちは、ジョージ6世です。

 アクアスキュータムの取材ですか。議員や指揮官をはじめ、みんながよく着ているので存じ上げております。大変、光栄なお話です。

 音楽に関する取材ということですが、今は世界中の音楽が手軽に聴ける世の中になったということですね。非常に羨ましく思っています。わたしの時代には、自宅や官邸にあった蓄音器でSP盤を聴く時代。例えば、アフリカやジャマイカの音楽が聴きたいと思っても、現地まで行かなくてはなりませんからね。旅行ジャーナリストの兼高かおるさんが、世界中の民族へ取材しているところを拝見し、非常にうらやましく思ったものです。

 そもそも、幼少時代のわたしは非常に病弱で、部屋の中で過ごす時間が多かった。その間は執事や教師から勉強を教えてもらっていました。正直、窮屈でした。楽しかったのは、読書の時間です。ロバート・ルイス・スティーヴンソン、ウィリアム・バトラー・イェイツなんかの小説を読みました。それから、もちろん音楽鑑賞も。好みだったのは優しいもので、ショパンの変奏曲 イ長調 「パガニーニの思い出」、それからサティ「ジムノペディ」などを愛聴していました。

 大変恐縮な話ですが、わたしの半生は映画(『英国王のスピーチ』)になっており、そちらを見ていただければ大体のことはおわかりいただけると思いますが、そもそも王位を継承するのは長男のエドワードであって、わたしが即位する予定はありませんでした。ところが、兄がドロップアウトしてしまい、わたしが継承することになりました。ちょうど第二次世界大戦の真っ只中の頃です。実はプランテーションという概念が大嫌いで、人種差別なんてもってのほかでしたから、戦争に紛れて、その辺全部チャラにしようと画策したんですよね。国力は低下し、散々批判されましたが、結果わたし個人としてはよかったと思っています。

 インドやアフリカ、カリブ諸島なんて、旅へ行くには最高のところだと思うんですよ。現地の人と出会い、文化に親しむ。もちろん、現地の音楽をたくさん聴いて。いま暮らしている世界には、ショパンやサティもいますし、ラヴィ・シャンカルだっていますから。すごく満足しています。

PLAY LIST 4

DJ・音楽ライター

渡辺克己

雑誌『BRUTUS』を筆頭に主に音楽に関する記事のライティング、企画・編集・監修を行うフリーランスの音楽ライター。また都内のクラブなどを中心にDJとして活動している。映画好きでもあり、“サントラ・ブラザース”という名義でDJ仲間である鶴谷聡平、山崎真央とともに映画と音楽にまつわる座談をBRUTUS.jpにて連載している

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