ドラムンベースも気合い入るけど、やっぱり『ロッキー』だな
ミッキー・オニールだ。ミッキーでいいよ。
オレの仕事? そうだな、金になることなら何でもやるけど、一応裏ボクシングのチャンピオンで通っている。うちの親がヨーロッパ中をあちこち放浪しながら生活しているような人でさぁ。今から50年くらい前、仲間たちがロンドン郊外にあるキャンプ場で共同生活していると聞き、流れついたみたいなんだ。それが今でも生活している、ここなんだよ。国籍や戸籍もないけど、特に不自由なんかないな。学校なんて行かなかったけど、生きる術は全部周りの人たちが教えてくれた。そんなこんなで、一通りワルさを覚えた12歳くらいの時だったかな。ケンカの最中、野球用のバットで、後頭部にフルスイングを喰らったことがあったんだけど、全然痛くなくて。その時、実は人一倍撃たれ強いということがわかったんだ。多分、どこか神経がおかしくなっているんだろうけど(笑)。それからパンチ力を鍛えてボクサーになろうと思ったんだけど、パスポートなんてないから、めちゃくちゃ稼げるアメリカへ渡ることもできなかった。まぁ、ここの生活が気に入っているからいいんだけどね。
音楽なんてラジオで聴くか、パーティでかかっているものしか聴いたことがないな。あ、そうだ、ようやく最近パーティが再開されてきて、デカいレイヴになると、バウンサーをやることがある。オレくらいの年齢になると、会場でいろいろなことを仕切るだけだから、酒飲んで遊んでいるだけだけど。最近’90年代に流行った早いビートを聴くことが多くなってきた。そう、ドラムンべースだ! あれはテンションも上がるし、最高なんだよね。低音やベースが強いのはレゲエみたいだし、ビートはバルカンみたいなものもある。詳しく知らないけど、オレの地元の仲間にはいろいろな人種がいて、昔からいろいろな音楽で踊ってきたから知ってるんだ。それから、ドラムンベースは高揚感も強いから、トレーニングしている時、バッチりハマるんだよね。確かに、オレは昔からそんな曲ばっかり聴いている気がする。裏チャンピオンでも、一応ロードトレーニングの時なんかは『ロッキー』のテーマとか、一応聴くんだぜ。そこんとこ、よろしくな!
PLAY LIST 3
DJ・音楽ライター
渡辺克己
雑誌『BRUTUS』を筆頭に主に音楽に関する記事のライティング、企画・編集・監修を行うフリーランスの音楽ライター。また都内のクラブなどを中心にDJとして活動している。映画好きでもあり、“サントラ・ブラザース”という名義でDJ仲間である鶴谷聡平、山崎真央とともに映画と音楽にまつわる座談をBRUTUS.jpにて連載している