vol.01
“DJ フランク・マーティン”

Text & Music selection: Katsumi Watanabe
Illustration: Terry Johnson
Plan & Edit: On-Point Design

トレンチコートが似合う歴史上の人物、映画の主人公がDJだったら何を選曲するのか!? そんなもしも企画が「なりきりDJアカス」。&AQが招いたDJアカスが毎回さまざまな人物になりきって、自己紹介とともに独自のプレイリストをお届け。第1回目は映画『トランスポーター』の主人公、フランク・マーティンにアカスがなりきります。ここでしか味わえないセットリストをぜひプレイしてみて!

音楽は、激しいミッションで疲れた身体を癒してくれる

 やぁ、フランク・マーティンだ。
 普段は車の運転手をしていて、仕事前は綿密なシュミレーション、仕事中は対象を約束の時間に送り届けるため、かなり集中している。だから、音楽を聴くことはないんだ。何? オレには仕事上、絶対に守っているルールが3つあることを聞いたって? よく知っているね(笑)。今回だけ、特別に普段のルールを教えてあげるよ。「契約厳守」、「依頼主の名前は聞かない」、「依頼品を絶対に開けない」。この3つさ。だから、届け先と荷物の大きさ以外、何を運んでいるかは知らないんだ。そういうわけで、音楽は任務が終わった後、開放感を味わいながらiPhoneのプレイリストで聴いているよ。
 まず、オレはイギリスのバーミンガムに近い、ダービーシャー州の出身。学校を出てから軍隊に入るんだけど、それまでよくパブで酒を飲み、ダンスフロアで踊ったもんだよ。みんな日常の鬱憤を晴らすために、よくそんな風に遊んでいた。イギリスを代表する歌手であるダスティ・スプリングフィールドは、ベテランなんだけど、みんなにリスペクトされていてね。特にメンフィスで録音された『Son of a Preacher Man』なんか、ゆっくりしたファンキーなリズムと、メロウなメロディが最高。夜が始まるのにぴったりな曲なんだよね。それから景気をつけたい時なんかは、ブレイクアウェイズ『That’s How It Goes』だね。彼女たちはダスティと同時期、1960年代から活動していた。アメリカのモータウン、フィル・スペクターの作品に影響を受けているみたいだ。そういう意味では、ダイアナ・ロス&ザ・シュプリームス、ロネッツの曲も聴くかな。それから『Give Me Just Little More time』みたいな、いわゆるノーザンソウルも好きなんだけど、やっぱりファンクの帝王、ジェイムス・ブラウンは欠かせないな。
 イギリスにもソウルミュージックの影響を受けたバンドは多くて、例えばポール・ウェラーのスタイル・カウンシル、その影響を受けたオーシャン・カラー・シーンも好き。そういう意味でもシャーデーは最高だね。ダンスもできるし、仕事で疲れた心と身体を癒してくれる。『Love Is Stronger Than Pride』は、眠る前によく聴いているよ。

PLAY LIST 1

DJ・音楽ライター

渡辺克己

雑誌『BRUTUS』を筆頭に主に音楽に関する記事のライティング、企画・編集・監修を行うフリーランスの音楽ライター。また都内のクラブなどを中心にDJとして活動している。映画好きでもあり、“サントラ・ブラザース”という名義でDJ仲間である鶴谷聡平、山崎真央とともに映画と音楽にまつわる座談をBRUTUS.jpにて連載している

『トランスポーター1~3』 Blu-ray&DVD発売中

発売・販売元:TCエンタテインメント

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